退院後、介護が必要に!?5つのステップ

ある日、突然 家族が入院。
医師から「もうすぐ退院できますよ」と言われたけれど――
「退院後、介護が必要になるかもしれない…」
そんな時、まず何から始めたらいいのか不安になりますよね。
きっと多くの方が、最初にこう感じるのではないでしょうか。
たとえば、こんな声をよく聞きます:
- 「病院では看護師さんが全部やってくれたけど、自宅で自分にできるか不安」
- 「入院前より明らかに体が弱っているのに、もう退院って早くないですか…?」
- 「介護保険って聞いたことはあるけど、どう使えばいいのか分かりません」
- 「自宅に帰ってきても、面倒を見てくれる家族がいない」
- 「施設に入れるにはお金がかかりそうで心配…」
看護師として働いていると、こうした不安の声をよく耳にします。
そこで今回は、**退院後に介護が必要になるかもしれない場合に、まず知っておきたい「最初の5ステップ」**をご紹介します。
✅ ステップ①:まずは病院の医療ソーシャルワーカーに相談しよう
🔸具体的に何をしてくれるの?
- 退院支援(自宅での介護?施設入所?などの相談)
- 要介護認定の説明と申請のアドバイス
- 地域の介護サービスや施設の紹介
- 在宅介護に必要な物(手すり・介護ベッドなど)の情報提供
🔸相談方法
- どこで? 入院している病院内の「医療相談室」や「地域連携室」
- どうやって? 病棟の看護師に「医療ソーシャルワーカーと相談したい」と伝えると、面談の場を設けてもらえます。退院調整が必要な場合には、病院側から提案されることもあります。
🔸FP視点のポイント
- 病院内でのソーシャルワーカーへの相談は無料です
退院後にかかる費用の見通し(医療・介護・生活費など)をあらかじめ相談することで、「何にどれだけかかるか」が見え、貯金や収入とのバランスも立てやすくなります。 - 介護サービスの利用有無で費用の差が大きいため、在宅と施設のコスト試算を聞いておくのが◎
たとえば、「訪問介護のみなら月2万~3万円」「施設に入ると月10万以上」など目安を教えてもらえます。医療費や介護費用の相談も可能です。たとえば、特別養護老人ホームは月額約8万円〜12万円程度、訪問介護は週2回の利用で月5,000円〜1万円ほどの自己負担になるケースもあります。
✅ ステップ②:地域包括支援センターに連絡する
🔸どんなところ?
- 高齢者支援の総合窓口(市区町村単位)
- 保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどが常駐しています
🔸相談できること
- 要介護認定の申請手続き
- ケアマネジャーの紹介
- 家から近い介護サービスが受けられるとことや・施設の案内
- 介護者向け支援(介護教室、相談、認知症サポートなど)
🔸相談方法
- どこで? 市役所の福祉課またはインターネットで「地域包括支援センター ○○市」などと検索すると、最寄りの窓口を確認できます。
- どうやって?
- 電話:まずは電話で相談をします
- 訪問:必要に応じて職員が自宅へ訪問してくれることもあります
🔸FP視点からのポイント
住民税非課税世帯・年金収入のみによる減免制度を事前に聞いておくとよいです
多くの市区町村では、所得の少ない方への介護保険料の減免制度や高額介護サービス費の負担限度額を設けています。地域によっては、住宅改修費の補助(上限20万円、自己負担1〜3割)や、福祉用具レンタルの補助制度もあります。家計に合った制度活用が重要です。
ケアマネジャーの存在は、費用対効果の高い「無料のアドバイザー」です
要介護認定を受ければ、ケアマネジャーが本人の状態や収入に合わせた最適なサービス(かつ無駄のない支出)を提案してくれます。しかも、ケアマネの費用は介護保険でまかなわれるため自己負担はありません。
✅ ステップ③:要介護認定の申請を行う
🔸なぜ必要?
- 訪問介護・通所介護・施設入所などの介護保険サービスを利用するためには認定が必須
- 要支援1〜要介護5まで状態に応じた認定が受けられる
- サービスは原則1〜3割負担(残りは公費負担)
🔸申請の流れ
- 地域包括支援センターか自治体窓口で申請
- 認定調査(訪問調査員による聞き取り)病院に来てもらうことも可能
- 主治医の意見書を提出
- 約1か月後に結果通知
🔸相談方法
地域包括支援センターに連絡し、「要介護認定を申請したい」と伝えれば、担当者が必要書類や今後の流れを丁寧に教えてくれます。病院にいる間でも家族が代行して手続きできます。
🔸FP視点からのポイント
医療費控除や障害者控除との連動にも注意が必要です
医療費と介護費を合わせて確定申告で控除を受けることが可能なケースがあります。特に、特養や有料老人ホームに入所している場合は「食事・居住費」が対象になることもあります。
「介護認定=サービス利用のパスポート」→支出を大きく軽減できる鍵となります。
認定されると、ホームヘルパー・福祉用具・デイサービスなどが原則1〜3割負担で使えるようになります(残りは介護保険でカバー)。※介護度ごとの「支給限度額」に注意が必要です。要介護1で月約5万円分、要介護5なら月約36万円分までのサービスが1〜3割負担で利用可能です。医療費控除の対象になる介護費や、特定入所者介護サービス費(補足給付)など、所得に応じた軽減策の活用が家計の支えになります。
✅ ステップ④:退院後の医療やリハビリについて主治医と相談する
🔸退院後に必要な医療支援とは?
- 傷の手当て、服薬管理、点滴・栄養管理など
- リハビリ(歩行訓練、関節の可動訓練、飲み込み練習など)
🔸利用できるサービス
- 訪問看護:看護師が自宅に来て医療ケアを提供
- 訪問リハビリ:リハビリ専門職が自宅で機能訓練
- 通所リハビリ(デイケア):施設に通ってリハビリを受ける
🔸相談方法
- どこで? 入院している病院の主治医・看護師・病棟スタッフ
- どうやって? 退院前カンファレンスや面談で相談する
- 退院前カンファレンスや外来受診の際に、主治医に直接相談するのが一般的です。必要に応じて訪問看護指示書やリハビリ指示書を発行してもらいます。
🔸FP視点からのポイント
- 訪問看護は医療保険の適用で、1回あたり300円〜1,000円程度の自己負担になることもあります。
通所リハビリは月4〜6回利用で5,000〜8,000円程度の自己負担が想定されます。保険の種類や負担割合によって差が出るため、主治医やケアマネジャーと費用の見通しを話し合っておくと安心です。
✅ ステップ⑤:在宅介護 or 施設入所と決めたあとも変更はいつでもできるということを知る
🔸在宅介護の場合
- 訪問介護、訪問看護、デイサービス、ショートステイなどを組み合わせ
- 介護保険の住宅改修制度(上限20万円)が使える
🔸施設入所の場合
- 特養:低コストだが待機者多数
- 老健:リハビリを受けながら在宅復帰を目指す
- 有料老人ホーム:サービスは手厚いが費用は高め(入居金+月額)
🔸相談方法
- どこで?
- ケアマネジャー(地域包括支援センター経由)
- 病院のソーシャルワーカー
- 介護施設の相談窓口
- どうやって?
- 見学の予約:施設のHPや電話で予約
- 条件(費用、空き状況)を確認
- 医療ソーシャルワーカーやケアマネジャー、地域包括支援センターに「在宅介護と施設、どちらが合っているか相談したい」と伝えれば、状況に応じたアドバイスを受けられます。
🔸FP視点からのポイント
- 特養の月額費用は約8万〜12万円、老健は10万〜15万円、有料老人ホームは15万〜30万円以上になることもあります。
- 所得に応じて「補足給付」により食費・居住費の負担軽減が受けられる場合もあります。年金額や預貯金と照らして、無理のない資金計画が重要です。
まとめ
介護が必要な状態で退院を求められたときには、
- 退院前に必ず医療ソーシャルワーカーやケアマネジャーに相談する
- 介護保険サービスや施設入所の手続きを早めに進める
- 家族だけで抱え込まず、地域や専門職のサポートを活用する
ことがとても大切です。
迷ったとき、不安なときは「まず相談」から始めてみてください。必要な情報や支援を受けることで、きっと前向きな一歩が踏み出せるはずです。